兼本 京士郎 さん
國分 絵里 さん
NTTドコモが目指す「挑戦する」組織。組織長へのエグゼクティブコーチで戦略・ビジョンの浸透へ
INDEX
dポイントクラブ会員数約1億という巨大なID基盤を誇り、通信領域以外にも多様なサービスを展開する株式会社NTTドコモ様。
組織体制も刷新し、よりダイナミックかつスピーディーな意思決定と成長に挑む同社では、2024年より組織長を対象に「mento for Business」エグゼクティブ・コーチを導入しています。
今回は、世の中が大きく変化する中でどのような組織を目指すのか、そこにおける課題とは何か、なぜエグゼクティブコーチングの導入を決めたのか、兼本さんと國分さんに伺いました。
(※記事内容・役職は2024年6月5日取材時点のものです)
NTTドコモ「コンシューマサービスカンパニー」が目指す姿とは
NTTドコモ様では、2022年に「スマートライフカンパニー」を設立されました。そして2024年7月にはスマートライフカンパニーと営業本部を統合し、「コンシューマサービスカンパニー」が新設されました。まずは、その背景を教えてください
兼本さん:スマートライフカンパニーは、NTTドコモの通信領域以外のサブスクリプションサービスを扱う部門とマーケティングソリューションを支える部門が統合して誕生しました。dポイント会員基盤にデータを蓄積していくという共通のコンセプトのもと、それぞれのサービスを磨きこみながら成長を続けています。
そして、dポイントの会員基盤が1億人規模と順調に拡大を続ける中で、さらに通信からサービスまで一気通貫でお客様体験価値を向上させるために、「スマートライフカンパニー」と「営業本部」が統合して「コンシューマサービスカンパニー」が新設されました。
「コンシューマサービスカンパニー」は、4,000人規模の大きな組織です。変化の激しい時代の中で、縦割りの組織で個別にアプローチをするよりも、ひとつの指揮系統でスピーディーな意思決定をしていくことを狙いとしています。
社内カンパニーとして組織作りに注力し、パーパスやバリューズを掲げているとお伺いしました。どのような組織を目指しているのか教えてください。
兼本さん:「スマートライフカンパニー」発足にあたり、「Purpose & 3Values」を策定しました。パーパスは、「つなぐ。育む。明日のあたりまえになるまで。」です。先ほどお話したように1億人のdポイント会員がいるほど国内の多くのお客様がいる会社なので、新しいニッチなサービスを作ることにとどまらず、日本の消費者にとって未来のスタンダードになるような価値を提供していくことを存在意義として定義しています。
そして、世の中に価値提供をしていく集団として「より良い提供価値の追求に終わりはない」、「構想は大きく、仕掛けは速く」、「社会の成長は、自らの成長からはじまる」を設定しています。これまで様々なサービスを作ってきた過去の経験を言語化して、未来の当たり前になるサービスを作るために意識してほしいこととしてまとめています。
実際に、キャッシュレスからヘルスケア、モビリティなど様々なサービスが一つに集まっているので、共通のコンセプトを大切に取り組もう、とカンパニー長から発信しています。私たちも社員に浸透する段階から関わり、カンパニー長と各サービスの社員との対話の場を作ってきました。
そのような組織作りのため、カンパニーコーポレート部の人事戦略ではどんな取り組みをしてきましたか?
兼本さん:カンパニーコーポレート部は、コンシューマサービスカンパニーの経営企画、総務、人事などを組織横断で支える部門です。私たち人事戦略では、「Purpose & 3Values」の浸透や、社員の生産性とエンゲージメントの観点から人的マネジメントを支えています。
「Purpose & 3Values」の浸透については、バリューズを体現した社員を称える表彰制度やパーパスやバリューズを反映した目標設定、職場内でのディスカッションなどの施策を実行しています。また、経営陣や組織長からパーパスやバリューズを反映したメッセージを定期的に発信してもらうことも大切です。今回のエグゼクティブコーチングの目的の一つにもなります。また、エンゲージメントについては四半期に1度サーベイを行い、組織ごとに傾向を分析しながら改善策を講じています。
組織長の内省とビジョンの言語化を支援するため、エグゼクティブコーチを導入
今回、コンシューマサービスカンパニーの組織長向けにエグゼクティブコーチングを導入していただきました。そのきっかけや課題感を教えてください。
國分さん:当社のビジネスモデルが変化し、お客様に新たな価値提供を目指す中で、コンシューマサービスカンパニーに対する期待は非常に高いです。その分、組織長への期待や責任は大きく、スピーディーな意思決定と挑戦のためにも組織長の抱える課題をサポートしたいと考えてエグゼクティブコーチングを導入しました。
具体的には、どのような課題があるのでしょうか。
國分さん:定量的なところでいうと、組織へのエンゲージメントサーベイで「戦略の浸透」や「経営陣が社員の声を聴いているか」といった項目の数値が低めに出ていることが可視化されました。その背景として、会社から期待される数字とパーパスやバリューズのバランスに葛藤されているのではと考えました。エグゼクティブコーチングが、組織長から部下への戦略の落とし込みやコミュニケーションのヒントになればと思っています。
兼本さん:ひとりの組織長あたり、多い場合は300名を超える部下がいます。日々様々な意思決定を求められる中、スケジュールも分刻みです。私たちがヒアリングをすると、当然ながら社員に対する強い想いは組織長として持っているのですが、想いはあってもなかなか整理して発信する時間を取ることができていないという現実があります。それならば、一人で悩むよりも外部の人に自分の想いを話したり、内省を促してもらいながら言語化したりする機会を設けるのはどうかと考えました。
組織長へのエグゼクティブコーチングの導入は新しい試みだと思いますが、どのように意思決定されましたか?
兼本さん:組織長や役員にそのアイデアを話してみたところ、「確かにそういう時間は必要かもしれない」ということで、3Valuesのひとつ「構想は大きく、仕掛けは速く。」にも照らし合わせて、まずは仕掛けてみようとエグゼクティブコーチング導入の了承を得ることができました。また従来の幹部育成のプログラムの中で、組織長はコーチングを受けたり学んだりしたことがある人も多かったようです。その経験もあったことから、継続してコーチングを受けることの必要性を感じてもらえたのかもしれません。
これから組織長にどのようにエグゼクティブコーチングを活用いただきたいと考えていますか?
國分さん:数百名の部下を率い、重要な意思決定をしていく組織長の孤独や葛藤は、計り知れないものがあります。人事戦略を担う者として、そこをサポートしたいという強い想いがありました。
また、3Valuesで掲げているように、新しい価値創造を担う組織を率いる組織長は、大きな構想を描き、スピード感を持ってチャレンジしていかねばなりません。客観的に内省をサポートするプロの方が側についていることで、そのチャレンジがぐっと促進されるはずだと思います。
兼本さん:組織長は、期初などの節目でメッセージを発信する機会があります。その時に、決められた事業計画や数字を話すだけではなく、その数字に込められた想いや、それをどのようなステップでみんなで乗り越えていくのか、何を社員たちに大切にしてもらいたいかなどをご自分の言葉で発信してほしいと思い、コーチングが言語化の機会になればと考えています。
受け放題+コーチ陣の層の厚さが、mentoの決め手
数あるサービスの中で、mentoのエグゼクティブコーチングを選んでいただいた理由を教えてください。
國分さん:大きく2つの理由があります。1つは、「受け放題」だったことです。コーチングの最終目的は行動変容です。しかし、月1回など低頻度のセッションだと、なかなか変化につながらないのではないかという懸念がありました。高速にPDCAを回せるかどうかが、行動変容へのカギとなります。忙しい中でも組織長自らの意思次第で短期スパンで内省の機会を得られるため、受け放題であることは魅力だと感じました。
もう1つの理由は、「ビジネス経験豊富なコーチが多い」ことです。大きな組織ならではの苦労を実際にご自身で体験されているコーチは、組織長たちの強い味方になっていただけるはずです。そして、さまざまな経験を積んだベテラン勢はもちろん、世の中の変化にスピーディーに対応する事業の経験がある中堅層や比較的若手のコーチもいらっしゃいます。組織長が抱える多様な悩みへの壁打ち相手が豊富であることも決め手になりました。
兼本さん:ダッシュボードで活動を見られたり、日々の疑問にスピーディに対応してフィードバックをいただける充実したサポート体制にも助かっています。
導入いただいて3ヶ月が経ったところですが、現状の所感はいかがですか?
兼本さん:中間レポートを見ると、組織長が私たち社内の人間に対して話す言葉よりも、社外の方であるコーチに伝えている言葉の方が、より生々しい言葉になっていると感じました。しっかりと内省と言語化ができているのではないかと思います。
また、組織長と部下との日常的なコミュニケーションにも明確な変化が表れています。導入当初は、期初などの戦略発表の場で自分の言葉で発信してほしいという狙いがありました。しかしコーチングをスタートしてみるとそれだけではなく、部下と話す時に以前よりも自己開示をしていたり、感情を込めたコミュニケーションをとるようになったりと、日々の営みの中でコーチングが活かされていると感じています。実際に、定量アンケートでも75%の人が「コミュニケーションの向上」、87%の人が「人間関係の向上」を実感しています。
そして組織長の声としても、インプットだけではなく、コーチングによって内省して自らPDCAを回すことの価値を感じているようです。実際にコーチングを受けて問いに対して答えていく中で、自分の中に気付きが生まれ、それがサイクルとして回っていくことを実感しているようです。
コーチングを活用し、挑戦する組織風土を醸成
今後のコンシューマサービスカンパニーの組織展望について教えてください。
國分さん:新しい価値を生み出し、お客さまに価値提供ができるよう、どんどん大きく仕掛けながらチャレンジできる組織にしたいです。その時に大事になるのが、仲間への信頼や、失敗を恐れず自分を信じて一歩踏み出す力だと思います。
組織長には、コーチングなどをうまく活用しながら、率先してチャレンジする存在になってほしいですね。そしてその姿を部下もみることで、組織全体にバリューズを浸透させていきたいと思っています。
兼本さん:労働人口が減少している昨今ですが、幸いなことに多くの社員がNTTドコモに可能性を感じて参画してくれています。そういった人材のポテンシャルを解放して、どんどん新しいサービスを創造する、そして既存サービスをよりよいものにするために挑戦する風土をつくることが必要です。
社員の挑戦を後押しする環境を、組織長が率先してつくっていくことはもちろんですが、より細やかなフォローやフィードバックのためには、ミドルマネジャーの協力が不可欠です。挑戦するマインドを、組織長からミドルマネジャーにもつないでいき、若手がどんどんチャレンジできる風土づくりに取り組んでいきたいです。