人事部長 佐田 雅弥さん
「1億人のかかりつけ機能」に向け急成長中のファストドクター。プロアクティブな事業成長に向け、コーチングで内省の強化を
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祖業から4つの事業へ拡大し、2年間で3倍規模の組織に急成長中
まずは、ファストドクター様の事業方針についてお聞かせください。
佐田さん:ファストドクターは、医療のドメインで「生活者の不安と、医療者の負担をなくす」というミッションのもと、祖業である夜間休日の救急往診を起点に在宅医療やオンライン診療など複数の領域での支援事業を展開しています。コロナ禍では、創業Vision「不要な救急車利用を3割へらす」のもと、生活者の方々の医療ニーズに応えるとともに、ひっ迫する医療現場を支えるという役割を果たしてきました。そこから先のチャレンジとして、「1億人のかかりつけ機能を担う」をVision2030に掲げています。
組織規模も急速に拡大していらっしゃいますね。
佐田さん:そうですね。2年前の正社員は60~70人でしたが、現在は200人規模に拡大しています。事業としては、祖業である救急往診事業だけではなく、オンライン診療事業、在宅医療支援事業、メンタルオンライン診療事業の4つの支援事業に拡大し、さらには2030年ビジョンの実現を目指し、新規事業にも積極的にチャレンジしています。そのためには、各事業それぞれが責任とスピード感を持って成長していくことが大切です。
組織の成長により事業をけん引するため、事業長にコーチングを導入
急成長する組織において、コーチング導入に至った背景をお聞かせください。
佐田さん:2024年6月、「診療報酬改定」がありました。これは厚生労働省が主導し、2年に一度、保険医療サービスに対して支払われる報酬の基準を見直しをするというものですが、当社の祖業である救急往診事業に対してはインパクトの小さくない改定内容でした。当社はこれまで世の中の大きなニーズに対応するサービスを提供することで事業を成長させており、それに伴い組織も拡大してきました。
しかし、今回のように事業に対して一定のインパクトがある出来事が起こったときにも事業を成長させていくには、プロアクティブな動きへと組織の力を最大化していくことが大事です。これまで以上に社員一人ひとりの能力向上によって組織を強化し、それによって事業成長をけん引していくというサイクルを作っていくべきだと考えました。
サイクルを変えていくためには、誰がキーパーソンになるのでしょうか。
佐田さん:変革のカギを握るのは、事業長などの責任者です。今後、チャレンジングな環境で事業の成長を実現していくには、成果に対するプレッシャーはさらに大きくなります。これまでは社会のニーズが大きかったため、取り組むべき課題も顕在化されやすい状況でしたが、これからは自組織の力で成長する環境をつくっていかねばなりません。
その際、まさに事業長が自ら考え課題創出型の問題解決思考で仕事を進める必要があります。そのために、どのようなサポートがあればいいのかを検討して、コーチングを導入しました。そして、事業長を支援することで、その配下の社員の成長を支えることにもつながると思いました。
なぜ、コーチングが役立つと考えたのでしょうか。
佐田さん:外部環境から発生した課題解決や上位者から与えられた課題の解決を超えて、自ら不確実な未来に向き合って、課題を創出し、非連続成長をつくっていくためには、一人ひとりの内省機能をもっと強くすることが大事だと考えました。こうした内省をサポートする役割を経営陣や人事が担うことも考えましたが、経営陣は会社の成長に向けて執行を担う事業長に一定のプレッシャーを掛けねばならない立場でもありますし、同僚である私には全てを吐露することが難しいこともあるだろうと考えました。
そこで、内省についてはプロであり利害関係のない外部の方に担っていただくのが良いのではないかと意思決定をしました。経営陣はチャレンジに向けたプレッシャーを、人事は環境づくりのサポートを、そして内省は外部のプロのコーチに。そうした役割分担が、今のフェーズの当社にとっては最適だと判断したのです。
私自身はそれまでコーチングを受けた経験はありませんでしたが、世の中にはコーチングによる成功事例もたくさんあるため、ここにチャレンジしてみようと思いました。
コーチとのマッチングや定性インタビューなどがmento導入の決め手
続いて、mentoを選定いただいた理由をお聞かせいただけますか。
佐田さん:一つは、コーチの方とのマッチングです。コーチングを受けた方々の話を聞いて、コーチとの相性がとても重要だと感じていました。また、最初は自分に合っていると思っても、時間が経って自身が変化していくうちに、少し合わないと感じることもあるかもしれません。mentoはコーチの方々とのマッチングをしっかり行ってくれて、合わなかった場合にコーチの交代もできるということから、導入したいと考えました。
もう一つは、定性インタビューによる振り返りのレポートをいただけることです。これは事業長本人にとっても良い気付きになりますし、上司である経営陣や、支援をする人事にとっても、客観的なデータとして参考にできます。そうしたことが、ポジティブな選定理由となりました。
今回、事業長だけではなく部長クラスの方々にもコーチングを受けていただきました。その選定の理由もお聞かせください。
佐田さん:今回の選定基準は、事業長もしくは各機能を率いている人物というのが1つです。そしてもう1つ、部下の人数が多い部長にもコーチングの機会を提供することにしました。なぜなら、たくさんのメンバーが配下にいる部長は、組織力を強化する上でのインパクトが大きいからです。マネジメント層がコーチングを受けることで、部下に対しても内省をサポートできるようになるという期待もありました。
集合研修などに比べて1on1のコーチングは大きな投資だと思いますが、導入の決め手はありましたか?
佐田さん:研修は、何かしらのナレッジを享受し、それを自分で消化し、行動変容に活かすという性質のものだと思いますが、これは受け手の姿勢に大きく依存するものです。もちろん、研修が必要な場面はあり、これまでもスポットで研修を導入したことはあります。
しかし今の当社には、知識よりも、一人ひとりがメタ認知機能を高めて、自身の力で自身の中にある答えに気付くというサイクルをつくることが必要だと考えました。コーチングはまさに内省を促すことでその人個人に合わせた解を自分で探すことになるため、知識を得る研修よりも大きな効果が期待できると考えました。
抽象的な未来からバックキャストで考える能力を、コーチングにより高めていく
今後コーチングを通じて、どのように組織開発や事業成長につなげていきたいですか。
佐田さん:事業長たちが個々から自組織を開発するとともに、個人の成長をつくっていくには、「あるべき姿」からバックキャスティングで考えていくことが非常に重要だと思います。なぜなら、私たちの事業自体、これまでは目の前の患者さんや生活者の方々、目の前のドクターの方々のお困りごとに応えることで、できることを積み上げてきました。
そうした良い部分は今後も大切にしながら、それに加えて抽象的な未来から逆算的に現在をとらえ、そのために不足していることは何か、メンバーにどういうことをフィードバックしていくべきかなど、あるべき姿に到達するためのことを自分の力で気付くことが求められます。そういうことを通じて、組織のケイパビリティも上がり、事業も成長すると信じています。
そして、よりチャレンジングな風土をつくっていくことも、事業長レイヤーに期待したい役割です。事業長たち皆、そのポテンシャルも能力もあります。それを引き出す一助に、コーチングを活用していきたいと考えています。