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パナソニック インダストリーに聞く、これからの組織づくり。挑戦できる企業風土づくりにおけるコーチングの役割とは
パナソニック インダストリーに聞く、これからの組織づくり。挑戦できる企業風土づくりにおけるコーチングの役割とは

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国内に1万人、グローバル総計で4万人以上の従業員を抱える、パナソニック インダストリー株式会社。2023年より「部長・課長100名を対象とした1年間(1期)のコーチング支援」を導入いただき、2期も継続導入いただいています。

2022年の創業から2年が経つ今、これからの組織づくりと人事の在り方、そこにコーチングがどう影響するのかについて、梅村さん(常務執行役員、CHRO)と黒木さん(人事戦略統括部 人財開発部 部長)にお話を伺いました。

動画はこちらから URL:https://youtu.be/dwJD_TpHI2g?feature=shared

“応える”から“提案する”へ。求められる事業会社の在り方の変化 

事業会社制により、パナソニック インダストリーとして創業してから2年。組織づくりにおいてどのようなことを重視されてきましたか?

 

梅村さん:これまでのパナソニックとしての強みは活かしたいと考えつつ、世の中的にも組織や会社の在り方は転換期を迎えていると感じていました。つまり、アドオンしていく部分と変わるべき部分の両方を重視してきましたね。

 

パナソニックは、「良い企業は良い部品から」という創業者の言葉からビジネスがスタートしています。外からは見えないかもしれませんが、日常のあらゆる製品に当社の部品が使われているという影響の範囲と責任感から、すごく真面目なカルチャーが根づいてきました。そのような真面目さ・手堅さは、組織という1つの塊としての大きな強みだと思っています。

 

一方で、これまでの「顧客の要望にいかに応えるか」から、「いかに先取りした提案をしていけるか」へと時代が求めるものが変わってきているのも感じていました。そうなると、待っているだけではダメで、時代の変化に合わせて人や組織も変わっていかなければならない。まだ見えていないトレンドの先に旗を立て、顧客と一緒に社会をリードしていくーーそんな会社になりたいという想いが、「未来の兆しを先取り、お客様とともに社会変革をリードする」というパナソニック インダストリーのビジョンには込められています。

 

今は一言にまとまっていますが、創業当初は「事業会社とは何か?」「どんな企業風土を目指したいか?」という根本的なところから話し合いました。それぞれがいろいろな思いや意見を持っていたので、経営幹部で何度も週末に合宿をして1日中ディスカッションしましたね。

 

“応える”から“提案”する組織へと変えていくためには、どんなことが必要だと議論されてきたのでしょうか?

 

梅村さん:“多様性”、そして“挑戦ができる組織”であることでしょうか。

 

時代を先取りして提案をしていくためにはアイデアが必要ですが、多様な人たちが活きる組織にこそアイデアは宿ると考えます。また、挑戦することがきちんと評価され、称賛される文化でないとアイデアは生まれません。

 

“多様性”や“挑戦”と聞くと当たり前のことに思えるかもしれませんが、正確性や均一性が重視される製造業にとっては、これまで求められてきたカルチャーと相反する視点とも言えます。

 

ものづくりの現場においては引き続き正確性や均一性を追求しつつ、人や組織としてはリスクを踏まえて挑戦していくーーこの2つのバランスは、今の製造業が抱える組織づくりの難しさでもあると感じます。

 

 

求められる組織・会社が変わることで、人事に求められるものはどのように変わるでしょうか?

 

梅村さん:これまで、人事はよく“バックオフィス”や“サポーター”などと言われてきました。もちろん、今もその側面はあります。でも、これからの人事は、事業をリードするドライバーの立ち位置に変わってきています。2000年代から非財務的な人的資本への注目が高まり、これからは事業戦略を見据えた人財戦略がより求められるでしょう。

 

そういう意味では、パナソニック創業者の「物をつくる前に人をつくる」の言葉には通ずるものを感じます。経営合宿でも、「本当の意味で、物をつくる前に人をつくる会社であることを体現したいね」と話してきました。

 

黒木さん:当社の組織づくりの根底にあるのは、「物をつくる前に人をつくる」というDNAをどう現代的に体現していくのかという問いだと思います。

 

経営陣から共有されたミッションやビジョンは、経営理念をベースに考えられているものだったからこそ、すっと受け入れることができました。共有された時は、新しさというより、改めて言語化されてクリアになったなという印象でしたね。

 

その後、人事課長以上のメンバーで論議を重ねました。戦略や具体的な施策を考える前に、「挑戦する会社になるにはどうすべきか」くらいの粒度から議論を始めましたね。

 

 

コーチングで組織のソフトウェアを強化。施策や制度を作るだけでは変革できない

経営陣や人事での議論の後、この2年間は目指す組織に向けてどのような取り組みを行なわれてきましたか?

 

梅村さん:組織づくりを考える際には、ハードウェアとソフトウェアの両面から考えるようにしています。ここで言うハードウェア(以下、ハード)とは制度や施策などで、ソフトウェア(以下、ソフト)とは運用や活用法などです。

 

組織を変えようとする時、「どんな施策を導入すればいいか」「どんな制度を作ろうか」など、ついハードに目が行きがちです。ですが、実はハードにはそんなに目新しいものなんてなくて、他社でもやっていることがほとんど。ハードだけでは組織やカルチャーの変革は起きません。肝心なのは、ハードをどう使うのか、どう運用するのかというソフトを強化していくことです。

  

たとえば、最近になって公募型異動制度が再評価されているのを目にしますが、公募型異動制度という制度自体は以前から存在していました。パナソニックでも20年以上前から公募制を導入しています。ただ、それほど大きな効果が見られなかったのは、良い運用方法が見つからなかったり、時代に合っていなかったりしたのだろうと思います。

 

それが今、個の選択を重んじる時代になり、公募型異動制度が再び注目されています。ここで重要なのは、制度の内容をブラッシュアップすることだけではなく、いかに運用していくかです。

 

いざ制度を導入した時に、上司や部下はどう向き合うべきか。これまでのように上意下達に「制度ができたので、使ってください」では通用しません。どのように運用を設計すれば、制度がより活きるのか。導入した制度や施策に対する行動変容を起こすために、コーチングのアプローチが必要だと感じました。組織のソフトを強くし、ハードをより活かすのがコーチングの役割だと思っています。

黒木さん:まだ導入から2年目ではありますが、コーチングの体験や学びによる組織への相乗効果を感じています。

当社ではマネジメントの研修を毎年行なっていますが、コーチングを導入してから実施した研修の後に、主催者から「1年前と比べて、参加者の聞く姿勢や反応がすごく変わった。スコアも劇的に変わった」「何かされましたか?」というフィードバックがあったんです。

まさに、コーチングをはじめ、さまざまな角度から組織のソフト面を強化してきたことが、研修というハード面の結果に活かされていることを感じました。

また、コーチング活用後に従業員意識調査の結果が大きく伸びている部署もあり、グループ会社の経営陣が集まる場でコーチングの取り組みについて発表もしてもらいました。事業会社によって、組織づくりのソリューションはさまざまだとは思いますが、1つの成功事例の選択肢として提示できたのではないかと思っています。

挑戦に大きさは関係ない。会社が提供すべきは「選択肢」

制度や施策だけでは組織は変わらないとなった時に、これから会社が提供すべきはどんなものだと言えるでしょうか?

梅村さん:企業の採用は選び・選ばれる関係とよく言われますが、労働人口が減っていくなか、企業側はより選ばれる立場に変わりつつあることを認識する必要があります。また、個人の価値観は大きく変化し、働き方だけでなくライフプランも含めて多様化が進んでいます。

そうしたなかで企業ができることは、「私たちはこういう会社になりたい」「こういうことを大事にしたい会社だ」という理念を掲げて、それに共感してくれる人に集まってもらい、繋がってもらうこと。そして、一人ひとりに「何を実現したいのか」「どう成長したいのか」を明確にしてもらい、会社がサポートすること。指示命令で動かすのではなく、お互いに共創し合うような組織にしていかなければならないと感じています。そのためにも、多様な選択肢を提供し、その人なりの成長の機会を選んでもらうことが必要です。

ここまで“挑戦できる組織”にしたいと話してきましたが、挑戦にも選択肢があっていいと思っています。たとえば、製造現場の人が日々の歩留まり改善に取り組むことも立派な挑戦ですし、新入社員が会議で勇気を持って手を挙げて意見を言うのも挑戦。挑戦する内容や大きさは関係なく、何か新しいことに取り組もうという想いを持った瞬間から挑戦は始まっています。

そうしたあらゆる挑戦をしっかりと認めて、拾い上げていくーーその積み重ねで「一人ひとりの“想い”を実らせる」ことが、当社が人財戦略で掲げる「想いを、動かせ。」に繋がり、会社としての成長にも繋がっていくと信じています。

最後に、今後の組織づくりの展望を教えてください。

 

梅村さん:まだまだ組織づくりはスタートしたばかりです。ありがたいことに、当社の取り組みに注目してくださり表彰いただく機会もあり、「どんな成果がありましたか?」と聞かれることも多いですが、「そんな簡単に出るかい!」というのが正直なところです(笑)。

今まで「どんなオーダーでも受けて立つぞ」というスタンスでやってきた人たちを「自分たちから提案しよう」というスタンスに変えるには、相当な時間がかかると思っています。だからこそ、社内で伝えているのは、「10年先を見据えて、今日から動こう」という姿勢です。

一度浸透したと思っても、「やっぱり、わからない」「これってどういうこと?」という声による揺り戻しも起こっていくかもしれません。だから、くどいくらいに、会社が目指していることをずっと伝え続けなければと思っています。

私たちが言っていることは、綺麗事かもしれません。青臭いことかもしれません。でも、「そんなのわかってるよ」ということがほとんどであったとしても、実際に行動に移すのは難しい。10年経ったら、ようやく少し変わるかもしれない、そのくらいの覚悟でやっていかなければならない。それが、これからの人事に求められるスタンスだと思っています。

動画はこちらから URL:https://youtu.be/dwJD_TpHI2g?feature=shared

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