たばこ事業 R&Dグループ RRP調達部 部長 佐藤大輔さん
たばこ事業 R&Dグループ RRP調達部 課長代理 神倉洋介さん
マネジメント層のコミュニケーションの変革に、コーチングを導入。JT RRP調達部に訪れた変化とは?
INDEX
加熱式たばこ製品の調達を担当する、日本たばこ産業株式会社 RRP調達部様。グローバルでの組織統合後、現場の混乱や社員のフラストレーションが生じていました。そこで、エンゲージメントサーベイを実施し、マネジメント層のコミュニケーションを変革する必要性を認識。コーチングの導入を決定し、マネジメント層を対象に継続的なトレーニングを実施されました。
実際に、あるマネージャーの組織サーベイのスコアは全体的に上昇し、特に「達成感を感じる」が30%改善で71ポイント、「自己成長への支援がある」が10%改善で75ポイントと大きな変化があったそうです。今回は、RRP調達部の佐藤さんと神倉さんに、コーチング導入の背景や成果についてお話を伺いました。
組織の大きな変革期の中、マネジメント層のコミュニケーションをより良く変革したい
RRP調達部の概要とミッションについてお聞かせください。
佐藤さん:
RRP調達部は、加熱式たばこ製品のデバイスを調達する部門です。私たちの役割は、製品を調達するにあたってサプライチェーンを構築することで、すべてのオペレーションに対して責任を持ちます。ミッションとしては、ベストインクラスの調達部門として最適なQCDの実現をすることです。
部門はどのような体制なのでしょうか?
佐藤さん:
組織としては、東京、ジュネーブ、香港、深セン、シンガポールの5拠点にまたがっており、全体で約100名の規模です。東京に関しては60名ほどが在籍しており、プルームエックスという高温加熱式たばこの部品の調達から工程のセットアップ、品質管理まで全体オペレーションのコアを見ています。
組織開発の方針について教えてください。
佐藤さん:
大きな方針としては、ひとつは個の成長、そしてもうひとつは組織のエンゲージメントの向上です。JTでは、海外のグループ会社であるJTインターナショナルとの組織統合を2022年1月より実施し、多様性のあるグローバル環境を構築してきました。一方、異なる文化を持つ組織の統合により、現場レベルでも業務上で様々な問題が起こり、混乱期でもありました。そこで起こるフラストレーションなど感情的なものは、当然ながら仕事のパフォーマンスに大きな影響を与える要因となります。
そこで、組織エンゲージメントを可視化することで組織のヘルスチェックを行い、職場の中でそれを議論する場を作ってきました。
どのような背景から、コーチングを導入されたのでしょうか?
佐藤さん:
昨年実施した全社的な組織サーベイの結果で、特に強化が必要な項目が大きく2つありました。
ひとつは、部下の成果や発言に対する承認を、上司がしっかりとできているかどうか。もう一つが、挑戦する風土があるかどうかです。これはつまり、現状を打破するために上司がしっかりと部下の意見を聞いて前に進むことができていないということだと認識しています。
それぞれのチームでの職場ミーティングでも、マネジメント層のコミュニケーションに変化が必要だという意見が出てきました。そこで、管理職がコーチングスキルを身に付けるべきではという話が出てきたのです。
なぜ、マネジメント層がコーチングスキルを身に付けることが有効だと考えたのですか?
神倉さん:
傾聴が足りなかったり、ティーチングに徹してしまっている傾向がありました。部下に指示はしているものの、個々の意見や考えを引き出すところまでは至っていないため、コーチングスキルを身に付けることが必要だと考えたのです。
単なるコーチングの提供ではなく、組織の課題に寄り添った提案が決め手に
mentoを選んだ理由をお聞かせください。
神倉さん:
当初、私もコーチングに関する知識はほとんどなく、「外部研修を1日2日受ければ十分だろう」と考えていました。そこでどのような研修があるのか調べてみたのですが、あまりに情報が多いため、当社の人事部に相談をしてみたのです。すると、「コーチングのスキルは、1日2日の研修で身に付くものではない。継続的なトレーニングとして導入すべき」というアドバイスをもらったのです。そして、mentoを含めていくつかコーチングの会社を紹介してもらいました。
そのなかでmentoに決めたのは、単にコーチングプログラムを提供するだけではなく、事前に私たちにインタビューをして組織課題を明確化してから、その要素をコーチングに取り入れるなど、当社個別の状況に寄り添う提案をしていただけたからです。そして、導入後も定期的に実施状況のレポートをいただいていますし、コーチング終了後のインタビューや、受講者の部下からのフィードバックも取っていただけました。このように充実したサポートもあり、お願いしてよかったと感じています。
コーチングの導入は、研修と比べたら大きな投資になるかと思いますが、意思決定の決め手はどこにあったのでしょうか?
佐藤さん:
当社のマネジメント層と部下との会話を聞いていると、だいたい批評か助言の2パターンしかないと感じていました。コーチングはこれら2つのパターンとはまったく異なるアプローチとなりますが、そういったアプローチを取っている場面は見たことがありませんでした。
そこで、新しいパターンとして会話の中にこれまでにないコーチングというアプローチを取り入れることで、メンバーとのコミュニケーションがより良いものになるのではないかと考えたのです。メンバーが自律できるように、上司がコーチとして人を育成するというエッセンスをしっかりと入れていくことが、コーチングに期待したことです。
自分自身を知り、考えを言語化することで、マネジメントに変化が生まれる
マネジメント層にコーチングを導入いただきましたが、導入の際に工夫した点を教えてください。
神倉さん:
私もそうでしたが、コーチングについてあまり知識のない対象者が多かったため、コーチングをスタートする前に「コーチングとは何か」を学ぶレクチャーをmentoにしていただきました。コーチングにはどのような効果があって、実際にどのようなスキルが身に付くのか、わかった上で始められたのでよかったと思います。
受講者の方にはどんなメッセージを発信しましたか?
佐藤さん:
1回目のコーチングを受けた後、「今後どう続けていけばいいのか」と悩んでいる受講者から相談を受けました。その時、「義務感で受けるのではなく、自分にとって必要だと思うことにしっかりと使っていけばいいよ。必要な時に必要な頻度で受けてもらえばいいからね」という話をしました。
コーチングの本質を捉えた素晴らしいアドバイスだと思います。その背景にはどんな想いがあったのでしょうか?
佐藤さん:
自分自身がどういう人間で、どういう考えを持っているのか、まずは内省する機会を持ってもらいたいと考えたからです。自分は何のために働いているのか、メンバーに何を求めているのか、メンバーは自分に何を期待しているのか、そういったことを考える機会は、普段なかなかとることができません。そこで、2週間に1回でも時間を取ってコーチングを受けて内省し、自分自身の発見につなげてほしいと思いました。
自分のことが理解できれば、今度は相手に対しても理解を深めていけますし、相手の考えを引き出したり内省を促したりできるようになるはずです。コーチングを受けたマネジメント本人と、その部下双方に効果が波及するものだと考えました。
コーチングを受けてみて、実際に成果や反響はいかがでしたか?
神倉さん:
受講者に感想を聞いてみたところ、「自分自身の考え方を見つめ直すいい機会になった」という声が多かったです。普段忙しくて、自分は何をしたいのかとか、自分の仕事やマネジメントはどうなのかなど、振り返る機会がなかったため、そのための時間を取れたことは大きな影響を与えたようです。さらにそれを言語化し、自分の言葉で相手に話すことで、より整理ができたという声も大きかったですね。
行動面では、コーチングを受けたマネジメント層の部下から「変化があった」という話を聞く機会がありました。また、業務の中でメンバーに1on1をしているマネジメント層からは、「コーチングを受けたことで、1on1に活用できるスキルを得られた」という反響もありました。
実際に、あるマネージャーの組織サーベイのスコアは全体的に上昇し、特に「達成感を感じる」が30%改善で71ポイント、「自己成長への支援がある」が10%改善で75ポイントと大きな変化がありました。
管理職だけではなく、メンバーにもコーチングを広めていきたい
改めて、コーチングの魅力をどのように感じていますか?
神倉さん:
コーチングは、自分自身を見つめ直す機会を確保できるだけではなく、必要なアクションを自発的に実践できるため、非常に有効だと思います。人から言われて実践することは、どうしても自分ごとだと捉えられず表面的に終わってしまいがちです。しかし、自分で考えてやろうと決めたことは、長続きして実りあるものになります。そして、コーチに実際にやってみてどうだったかを話して、さらにアップデートしていくサイクルができることもいいことだと思います。
どんな組織においてもニーズはあるでしょうが、特に上位レイヤーの管理職だけではなく、メンバーにとっても、自分のキャリア形成やビジネスパーソンとしてのレベルアップにつながるため、コーチングは有効なのではと思います。
佐藤さん:
研修によっては、その場では意識は高まるものの、時間が経つと忘れてしまうものもあると思います。しかしコーチングは、しっかりと時間をかけてやっていくことで、スキルとして身に付けられることが魅力だと思います。
今後の展望についてお聞かせください。
佐藤さん:
組織開発には正解はなく、その時の環境の変化に応じて常に変わっていくものです。そこで、環境適応性を身に付けていくことが一番のポイントだと思います。そのために、コーチングもひとつのエッセンスとしながら、常に変化し続けるビジネス環境に対応できる人材をつくっていきたいですね。
mentoカスタマーサクセス担当の庄司と共に