報道制作局次長(制作部担当)プロデューサー 田中 秀典さん(写真左奥)
報道制作局次長 兼 報道部長 杉山 武博さん(写真左前)
コンテンツマネジメント部部長 牧野 克彦さん(写真右前)
システムデザイン局 メディアシステムグループ 副部長 西尾 圭介さん(写真右奥)
コーチングは「セーフティゾーンであり、行動を起こすプレッシャーでもある」。静岡新聞社・静岡放送の組織を変えていくミドルマネージャーたちの体験談
INDEX
株式会社静岡新聞社・静岡放送株式会社は、メディア業界が変化する中で「第二創業」を宣言して組織改革を開始し、ミドルマネージャーの成長支援のためにコーチングを導入しました。今回は、実際にコーチングを受けた4人のミドルマネージャー・アシスタントマネージャーの方々に、コーチングをどのように活用しているか?を座談会形式でお話を伺いました。
新しい環境変化やマネジメントへのヒントがほしかったからコーチングを受けた
まずは、自己紹介とコーチングを受けようと思ったきっかけについて教えてください。
杉山さん:私は、報道制作局で報道部長をしています。私自身は20数年間新聞記者を経験し、そこから1年総務部門を経て今放送局に異動になりました。大きく環境が変わるタイミングでちょうどコーチングの話があり、どうやって変化に対応していくか相談したいなと思って参加しました。
西尾さん:私は現在、静岡新聞と静岡放送の所属で、全社的なシステムの業務を担当するシステムデザイン局の副部長をしています。私はこれまで放送の業務の方が長くて、18年ほどテレビの現場を経験してきました。
仕事での異動と家庭でも変化があり、節目が重なったタイミングで先輩からコーチングの話を聞きました。私自身はアシスタントマネージャーなのですが、ぜひ受けたいと伝えてコーチングの機会をもらいました。
自分自身の変化のタイミングも重なり受けることを決めたのですね。牧野さん、田中さんはどうですか?
牧野さん:私は、コンテンツマネジメント部の部長をしています。キャリアとしては20年ほどアナウンサーを中心にしてきて、マネジメントの世界に本格的に飛び込んでいるのはここ3年の話なので、マネジメントに関する不安を払拭するために申し込みました。
特に、私が部長になった時、ほとんどの部員が年上だったんです。今までの人生で年上の方に指示をすることはあまりなかったので、どういう形で接していけばいいかを悩んでいて。まずはそれを解決したいと思っていました。
田中さん:私は、報道制作局の局次長をしています。入社から10年ほど報道制作部でADからディレクターをしていて、次に営業の外勤として静岡新聞と静岡放送の両方の名刺を持って東京支社と浜松総局で広告営業を15年やってきました。そこから2年半ほど前にまた報道制作局にプロデューサーという形で戻ってきました。
今回は、会社が第二創業として変わろうとしている時期で、色々とチャレンジしている中の一つの取り組みだと捉えたので、やれるものはやってみようと思いましたね。あとは、私も2018年の浜松総局の頃からマネジメントをしている中で迷うところがあったので、相談できたらと思いました。
おふたりはマネジメントに対してのヒントがほしいと思ったんですね。
田中さん:同じ部署に15年ぶりに戻ってきたのですが、自分が育ってきた会社の環境と自分がマネージャーになった今の会社の環境がだいぶ変わっていて。事業環境や若手の育て方が変わる中で、また違うマネジメントをしていかなきゃいけないんだろうなと思いながらも、どんなマネジメントが正解か分からない状態でした。
その中でコーチングが何かヒントになったり、自分の中で変化するものがあるか興味があったんです。
牧野さん:ミドルマネージャーは会社のエンジンだと思うので、第二創業の中で意識を大きく変えないといけないというのは私も感じています。ただ、自分自身がずっと正解だと思ってきた価値観があるので、ここを変えるのはやっぱり人の力を借りないとなかなか難しいなと思いました。
杉山さん:たしかに会社が求めている変化を自分たちが動かす立場になるので、そのために何が欠けていて、何をどうしていけばいいかのヒントになったらなと思いましたね。実際にヒントが得られたし、コーチングを受けた人同士で話すことで事例として学べる場にもなりました。
西尾さん:私自身も、アシスタントマネージャーとして今の若い世代にあわせた言葉で伝えて、成長を促すような役回りができたらと思っていました。
コーチングは型があるものではない。セーフティゾーンで背中を押してもらえるコーチの存在
実際にコーチングを受けてみた最初の感想やどんな印象を持ったかを教えてください。
牧野さん:思っていたのとは違いました。型があって教えてもらえるものではないんだなと。友達に打ち明けるような雰囲気で、初回から初対面の人にこれだけ話せるのはすごいと思いました。そこの引き出し方は本当にプロですね。
西尾さん:利害関係がないという大前提の中で話せた安心感があって、自分自身の棚卸しができました。まるで鏡のような形で、自分自身と対話しているような印象を受けましたね。自分の話を引き出してもらう中で、自分はこんなことを思っていたのか、と気づけました。
杉山さん:最初はただ愚痴を聞いてもらっていただけだった気がします。でも「愚痴は宝だよ」と言われたんです。「愚痴を言えるということは課題がわかっているということだから、それを言ってもらえたら解決するための後押しができるよ」と言ってもらえたのが印象的でした。
それからテーマ性を持ちながら1回1回のセッションに臨んで、セッション以外の場面では実際に行動しながら「どんなことを話そうかな」と考え、次のセッションを迎える。そう繰り返していくうちに、セッションの迎え方が少しずつ変化していきました。
田中さん:会社の変革の中でいろいろな取り組みがあるけど、「ここはセーフティーゾーンだから何でも言っていいよ」と言われて。最初は無理やり作られたものだと思ったけど、コーチングを受ける中で何もしがらみがない中で正直に話せる人がいるってまさしくセーフティゾーンだなと感じるようになりました。
話を引き出すプロフェッショナルであり、いい形で背中を押してくれる存在でした。仕事のこともプライベートなことも含めて話せる、2週間に1回すごく癒される時間でしたね。
牧野さん:友達でも家族でもないのにこんなに話せるのは不思議な存在ですよね。
杉山さん:オンラインでしか会っていないので、本当に存在するのかな?とまで思いますね(笑)。
理想の状態や道標を考えて、周りを巻き込む行動を起こせるように
そんなコーチの存在が、どういうふうに自分自身や仕事に役立ちましたか?
西尾さん:キーワードとしては「他人軸」から「自分軸」へ。コーチングが進んでいくにつれて、徐々に変化していく自分を感じました。一生懸命やってきた仕事を振り返ったり、普段感じていることや発している言葉を扱ったりした中で、本当に自分が思っていることを大事にしていいと気付かせてもらえたんです。
過去、大変だった時にどこかで自分を責めている自分がいたけど、自分を認めて自分軸で生きていくことが大事だと感じられました。ちょうど40歳の節目で、自分の人生と仕事を俯瞰的に見られるようになったことは、これからの人生にも仕事にも大きく役立っていくと思います。
直近では、異動で環境の変化があった中で、アシスタントマネージャーとして自分がどういう役割をできるか?どうあるべきか?を考えることができました。行動面でも、自分の中の「ストレッチゾーン」に一歩踏み込んでいこうという意識を身につけることができたのではないかなと思います。忙しいかなぁと思いつつ上長にチャットしてみたり、飛び込んでみたりする。そうすると上長からも「やってみなよ」と言ってもらえて。コーチから「コンフォートゾーンを広げていこう」という言葉で後押ししてもらったことが印象に残っています。
田中さん:印象に残っているのは「理想が叶った状態で話してみましょう」というセッションをしたことです。理想が叶ったと仮定して、そこまでのプロセスを話すことで、目標に辿り着くまでのシミュレーションができたんですよね。
普段の仕事や生活の中では目の前のことをこなしたり、トラブル対応をしたりで忙しいので、時間を作って将来のことを考えられただけでも自分にとって成長できたことだと思います。
そして、実際に理想までのプロセスを考えたことで「巻き込み力」が大事だと考えました。自分の中では高いハードルも背中を押してもらって、他局や部員を巻き込むアプローチをすることができました。2週間後のコーチングセッションで立てた目標の振り返りをしなきゃいけないから、自分にいい意味でプレッシャーをかけられる部分もあったと思います。
杉山さん:私は新聞社から報道の部署に異動になってから、リスクマネジメントを考えることが増えて比較的ネガティブな考えになっていました。コーチングの中で「ありもしないことをマイナスに捉えなくてもいい」とアドバイスをもらったんですよね。捉え方を変えるだけで、自分の中の思考を変えることができたのが自分自身の変化としては大きかったです。
また、部署の空気感をもっとよくしたいという相談をした時には、全体から変えるのは難しいからまずは自分が変わることを見せていこうと話しました。そうやって「自分の変化からいい風土を作ることを目標にする」という道標を作ることができました。田中さんの話した「巻き込み力」とも近いかもしれないですが、スタッフも上長も巻き込んでどんどん仲間を増やしていくことを私も少しずつ実践しています。
牧野さん:私はマネジメントでの変化が大きいです。これまでは相手の立場を考えられていなかったなと反省しています。「部員のそれぞれのストーリーをイメージしてください」と言われたのがとても印象的で、その人の価値観や仕事を通じて何を得たいかのイメージをふくらませる作業をしたんです。そうすることで、価値観の重なっている部分で同じ方向に向かっていけるという気づきがありました。
実際に部員と「どういう休みを過ごしていますか?」などと仕事以外の会話もするようになり、普段のコミュニケーションも変わったんじゃないかなと思います。
田中さん:マネジメント面でいうと、背中を見て学ぶ時代から教える時代に変化しているけど、実際にはやっぱり現場で働く人が自走できるようにしないといけないと思っています。
そういう中で、自走してもらうためのアプローチの仕方や雰囲気の作り方について今回学んだ部分があってよかったです。
ミドルマネージャーとして周りを巻き込み、新聞・放送の垣根を超えた連携を目指す
最後にこれからやっていきたいことについて教えてください。
西尾さん:やっぱり会社を作っていくのは人だと思います。業績や色々な外的要素でこうあるべきと悩んでいる社員もいるかもしれない。でも、やっぱり彼らの人生の中に仕事があると思うので、今度は自分が気づかせてあげられるコーチのような存在になりたいです。
牧野さん:同じく、コーチングしている瞬間を見ることができたのは得るものが多かったです。聞き出し方も導き方も勉強になりましたし、「相手の人生をどうよりよくできるか」だけを考えて、人の力を引き出すことができるすごい瞬間ですよね。今度は自分自身が社内のコーチングをしていこうという気持ちで、部員一人ひとりの人生をより良くしたいです。
目の前の仕事の話だけではなく理想をイメージしてみるとか、プライベートや運動の話をしてみるとか、選択肢をたくさん持つことができたので、それをマネジメントに活かしていきたいと思います。
田中さん:コーチングを受ける前と今で「会社を強くしていかなきゃいけない」という気持ちは変わっていないです。そのために自分は何ができるか、どれだけ自分の仲間や部員も含めて巻き込んでいけるかを考え続けられたらと思っています。
杉山さん:新聞と放送を経験した中で、どれだけ二社が融合してお互いの力を高め合っていけるかが命題だと思っています。そのために何ができるかをコーチと相談してきたので、それを実践に移して新聞・放送みんなで連携していくことを目指していきたいです。