
取締役 松本築樹さん
DeNA Games Tokyo初、エンジニア出身の取締役が、コーチングによって感じた成長
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今回お届けするのは、mentoのエグゼクティブコーチングを利用してくださった方のインタビューです。DeNA Games Tokyo(以下 DGT)の松本さんは、取締役就任をきっかけにコーチングを開始。会社経営の経験を持つコーチとの対話のなかで、意思決定や発信の仕方が整理されていったといいます。一度は「限界を感じた」という松本さんの取締役としての成長ストーリーを伺いました。
エンジニア部長と取締役を兼務し、重要な意思決定に携わる
はじめに、松本さんのこれまでのキャリアについてお話しいただけますか。
松本さん:
新卒では大手Sierでシステムエンジニアをしていました。その後、ゲーム業界で転職先を探してDGTに入社しました。はじめはブラウザエンジニアとして「怪盗ロワイヤル」を担当。それからアプリエンジニアも経験し、2つのタイトルのリーダー経験をした後、マネージャーを経て、現在はエンジニア組織の部長と取締役を兼任しています。
なぜDGTに転職を決めたのでしょうか?
松本さん:
もともと、システムエンジニアになったのは自分で手を動かして作りたかったからなんです。でも、前職の場合は上流工程がほとんどでした。まずは自分で手を動かしてスキルをつけたうえで上流工程に行く方がキャリアとしていいなと思いました。また、ゲームも比較的好きだったので、DGTへの転職を決めました。とはいえ、ブラウザゲームはサイクルが早く、毎月毎月何かを開発してリリースしていく状況なので、転職当初はついていくのがかなり大変でしたね。

仕事はどうやってキャッチアップしていたのですか?
松本さん:
「この人めちゃくちゃ仕事できるな」というすごい人を見つけて、ひたすらその人の真似をしていました。どのように周囲とコミュニケーションを取っているのか、どういう仕事の進め方をしているのか、どんな風にコードを書いているのか、とにかく全部を観察して、学び取っていった形です。エンジニアの仕事が初めてだったので、最初は周囲の人すべてがロールモデルばかりで、必死でくらいついていきました。
それから手を動かしてリードされたあと、マネージャーになったのですね。もともとマネージャーになることを目指していましたか?
松本さん:
あまりそこまでのキャリアイメージは持っていませんでしたが、手を動かして色々仕事を経験するなかで、自分はスペシャリストよりはマネジメントが向いているのかなと思うようになりました。ですから、マネージャーの打診があったときは、迷うことなくやりますと言いました。
現在はエンジニアの部長と取締役を兼任されていますが、それぞれ具体的にどのような仕事内容なのでしょうか。
松本さん:
部長としての仕事は、DGTのゲーム運営を中心とした事業を成立させるために、技術部にどのようなエンジニアが必要で、どんなスキルが求められて、どういう育成をして、アサインしていくのかを描き、組織を動かしていきます。
それを技術部内だけではなく、DGT全体の事業と組織に拡張し、戦略やミッション・ビジョンを描いて実行していくのが、取締役としての役割です。
エンジニアから取締役というDGT史上初のキャリア。役割変化をきっかけに、コーチングを開始

mentoでコーチングを受け始めて1年半ほどになりますが、どんなきっかけでコーチングを受けるようになったのでしょうか。
松本さん:
コーチングを受け始めたのは、ちょうど取締役になる直前です。役割が変わるタイミングにmentoの担当者の方からの提案があり、上司からも勧められたことから受けることにしました。やはりマネージャーになった時とは異なり、取締役となると過去のキャリアの延長線上とはいかず、気負う面もありました。
それに、DGTの歴史のなかでエンジニアから経営に入っていく人はおらず、私が初めてでした。先ほどお話ししたように、私は身近にすごい人を見つけて、その人から学んで成長していくタイプです。しかし前例のない人事ですから、ここから先のキャリアにはロールモデルがいません。社内でロールモデルを探すのではなく自分の中に理想像を作ったり、社外に求めたりしていかなければならないタイミングにあったということです。だからこそ、社外のコーチと対話をすることが必要ではないかと考えました。
役割が変化する時、具体的にどんな悩みがあったのでしょうか。
松本さん:まさか自分が取締役になるとは思っていなかったので、その先のキャリアが見えずモヤモヤしていました。エンジニアから取締役を経て、その先はどうなっていくのか。当時は、自分のキャリアをどう紐づけて仕事に取り組んでいくべきか、まったくイメージできず不安でした。
「それって本当にしないといけないんですか?」コーチのキラークエスチョンで、自らの意思決定を見つめ直した
コーチとは、どのようなテーマで話をしましたか?
松本さん:
はじめは、自分のなかの不安やキャリアをテーマにしようと思っていたのですが、いざ始めてみると会社の事業や組織に関することばかり話していました。ミッション・ビジョンを刷新する上での進め方や、「会社としてこうしなければいけないとは思うけど、いざそれを進めようとすると思考が止まっちゃう」といった悩みなど、自分自身よりも会社の今や未来の話が8割以上を占めていましたね。

その悩みを相談したとき、コーチからはどんな問いをもらいましたか?
松本さん:
印象に残っているのは、「こういわれているので、こうしなきゃいけないんですよね」と話した時に、「それって本当にしないといけないんですか?」と問われたことです。「だってやるのに気が進まないんですよね?」「誰がやらなきゃいけないって決めたんですか?」など、キラークエスチョンが飛んできて、ハッとしました。
いわれてみれば、自分たちが経営として決めていくことなのに、「しなきゃいけない」と誰かから命じられたみたいにやっている感覚自体、おかしいことですよね。コーチからの問いかけのおかげで、「これをやるのは気が進まないな」という感情にも向き合いながら、自分の考えを深掘り、やるべきことを整理していけるようになってきました。
キラークエスチョンによって一度立ち止まって、自分の意思決定を見つめ直すきっかけになったのですね。
松本さん:
意思決定は、論理だけでも足りないし、感情だけでももちろん良くない。両方を、うまく伝わるように整理して伝えることが理想です。この経験は、論理と感情の両面から、意思決定をするための重要なプロセスでした。これはきっと、社外の人だからこそできたことだと思います。社内の人間だったら、私が「しなきゃいけない」と言ったら、「そうだね」と受け止められることも少なくない。私自身やDGTの背景情報が少ない外部の方から問いを投げかけてくれることが、ありがたかったですね。
孤独に陥りがちな経営層こそ、コーチングを受ける価値がある

当初は取締役のキャリアがイメージできないという悩みを持たれていましたが、コーチングを受けたあとでご自身の中で変化があれば教えてください。
松本さん:
実は一度、あまりにうまくいかないことが重なりすぎて、「ここが限界かもな」と思ったことがあるんです。これまで経験したことのない重責のなかで、取締役としての成長とは何か、見えなかったことが原因だったと思います。そんな状況を、コーチングで言語化することで乗り越えていけました。「これができなかった」「ここに自分の伸びしろがあった」と一つひとつ感じたことを明確にしながら積み上げていくことで、「いけそうだな」と手ごたえを感じることができました。
コーチは、松本さんにとってどういう存在ですか?
松本さん:
最初は、やろうとしていることに対する壁打ちをしてもらう存在でした。しかし最近では、自分のやり方や考え方を抽象化したものを聞いてもらう相手になっています。
そうやって抽象度が高い状態でアウトプットすると、自分のなかでさらに整理されて、自分の仕事に対する価値観がいつでも再現性をもって引き出せるようになりました。コーチングのなかで聞いてもらうことで、「自分はこういうコミュニケーションの傾向がある」「こういうときにイラっとする」など、いわば自分の“取説”みたいなものができました。
自分の“取説”ができたことで、よかったことはありますか?
松本さん:
以前は、割と感覚で発信しがちだったのが、それでは人に伝わらないことがわかり、前提や背景をしっかりと説明するようになりました。また、人に伝わらなかった時「どうしよう」とモヤモヤして次のアクションが遅くなってしまうことがありましたが、“取説”で伝わらない時のパターンも見えるようになり、アクションが止まることはかなり減りました。
取締役などエグゼクティブの方がコーチングを受ける価値について、どうお考えですか。
松本さん:
経営に関わる人間の大きな仕事は、意思決定をすることです。その際、テーマの抽象度が上がれば上がるほど、論理も感情も含めて整理をする難易度自体上がりますし、それを話し合う相手との意見の衝突も増えると考えています。そうなったとき、その立場の人は孤独になりがちです。
意思決定に関わるテーマは誰にでも話せる内容ではないことも多く、そうなると壁打ち相手もいなくなり、整理しにくくなります。そんな状況に陥っているからこそ、会社の意思決定とは関係のない、しかし豊富な経験を持つコーチと壁打ちをして、客観的に自分を見つめ直す時間は非常に貴重です。それが、経営に関わる人が意思決定をするなかで、コーチングを受ける一番の価値だと感じています。
最後に、松本さんの今後の目標をお聞かせください。
松本さん:
ミッション・ビジョンを刷新して、まだ1年。まだまだ社内にうまく伝わり切っていないと感じますし、込めきれていないエッセンスももしかしたらあるかもしれません。今後もブラッシュアップを続けて、会社として大切にしていきたいことや、会社としてこう進んでいくんだという方針が浸透している状態を創りたいですね。

mentoサクセス担当 宮城、代表の川口さんと共に